孫子の計篇の最後にこうあります。
夫れ未だ戦わずして廟算して勝つ者は、
算を得ること多ければなり。
未だ戦わずして廟算して勝たざる者は、
算を得ること少なければなり。
算多きは勝ち、算少なきは勝たず。
而るを況や算なきに於いてをや。
吾れ此れを以てこれを観るに、勝負見(あら)わる。
勝負は戦う前にはっきりしているということですが、
日常の生活もまさにそのとおりだなと思います。
今日一日の生活、今年一年の生活、自分一生の生活。
日々がその日暮らし、場当たりで生活していると、
それは全く勝ち目のない人生を歩んでいるようなものです。
人生に勝ち負けはありませんが、ここでいう「勝ち」とは
自らの手で選択している(自発的な)人生か、
選択させられている(受身的な)人生か。
ということです。
受身にならないためには、考えて自ら人生の先を制して
いかなければなりません。
先を制すというのも、実際の行動を何でもいいから
起こしていくということでなく、その行動の原点になる志を
しっかりと立て、かつ、達成するための手段をよくよく考える
ということです。
一日の生活を、一つの行動をもっともっと考えていける
ようにしなければならないと改めて反省します。
行動に移す前に詰んでいる。少なくとも頭の中では
そのようでありたいと思いました。
一日の学問 千載の宝
百年の富貴 一朝の塵
一書の恩徳 萬玉に勝る
一言の教訓 重きこと千金
僅か一日の浅い学問であっても、自分の身につけば永遠の実りとなって残るが、百年の年月をかけて蓄積された大きな財産でも、学問と違い僅かの間に灰燼に帰してしまう。意義ある一冊の本から受ける恩徳は、多くの宝玉よりも大きく、師の一言の教訓の貴重さは千金の重さに匹敵する。
越智直正氏の著書「男児志を立つ」に紹介されている鎌倉末期の禅僧・夢窓疎石の作の七言絶句です。
参考:致知2009年9月号
越智直正氏は、僕も気に入って利用している靴下、タビオ株式会社(靴下の製造・卸・小売りで業界トップ)の代表取締役会長です。
越智氏は15歳、中学卒業と同時に大阪の靴下屋に丁稚奉公し、休みは月1回。朝早くから夜遅くまで働きずくめの毎日で、ある日、先輩に強制的に連れられて行ったのが古本屋でした。
中学卒業時に先生から「難しいだろうが、中国古典を読め」と教えられたのを思い出し、その古本屋でもとめたのが「孫子」でした。中学卒の学力では難解でしたが、「一念巌をも通す」で辞書を引きながら3年。全文を暗唱するまでになりました。
以来、氏の前には東洋古典の無限の豊穣の世界が開け、今日に至ると越智氏は言い、下のように続けます。
「私は自分を取り巻く社会の人に、“持って生まれた自分の個性を発揮して世間から歓迎されるような生き方がが最高の生き方だ。いかに個性を発揮しても、世間にご迷惑をかけるような生き方だけはやめて欲しい”と、ことあるごとに話しています。」と。
まさに、“一書の恩徳、萬玉に勝る”思いで致知を読み、古典に触れ、そして、師匠の一言を教訓とし、日々生活しております。
越智氏の仰るとおり、いかに個性を発揮しても、世間から歓迎されない生き方をしては駄目だと胸に突き刺さる思いです。
一日の学問、一書の恩徳、一言の教訓を大切に積み重ね、確固たる価値観、信念、不動の生き方を身につけて世間に歓迎されるよう、今後も身も心も引き締めて精進していきたいと思いました。