武士道の克己―心を安らかに保つために

2009 年 8 月 28 日 104 views コメント (0)

感情を顔に出すべからず

新渡戸稲造武士道においては不平不満を並べ立てない不屈の勇気を訓練することが行われていた。そして他方では、礼の教訓があった。それは自己の悲しみ、苦しみを外面に表わして他人の愉快や平穏をかき乱すことがないように求めていた。(新渡戸稲造)

立派な人物を評するとき、「喜怒を色に表さず」という言葉が用いられたように、日本人の美徳として感情を表面に表わさない。というものがあります。漫画の話で恐縮ですが「風の大地」の主人公は、まさにこの克己の体現者でした。

自己の感情を出さないということは、他人の感情に影響を及ぼさないようにとの配慮だと稲造先生は仰っていますが、人の感情の揺れ動きを敏感に感じ取ってしまう日本人というのは、やはり、細やかな感性の持ち主なのだと思います。

なぜ「寡黙」がよしとされるのか

新渡戸稲造男子でも女子でも自己の魂が揺り動かされるのを感じるとき、まず最初、直感的にそのことが外に表れないように静かに抑えようと努める。(新渡戸稲造)

ある若いサムライはその日記に次のように書いています。
「汝の言葉の土壌が微妙なる思想をもって働くを感ずるか。それは種子の芽生えるときならん。言葉をもってこれを妨ぐるな。静かに、秘やかに、これをして独り働かしめよ」

何かの芽生えを言葉で邪魔をしてはいけない。と忠告しています。

確かに、感動を言葉で発するとき、自己の中に湧き上がるエネルギーを内に留め熟成させることなく、外に出してしまったという感覚はあります。

幕末の志士「橋本左内」は、私塾で学び、皆で討論しているときも物静かで、何を考えているか分からなかったと言います。しかし、いざ事を起こそうとしたとき、他の皆は討論でエネルギーを使い果し、実際に事を起こせたのは左内ただ一人だったという話も「啓発録」で読みました。

心を安らかに保つために

新渡戸稲造克己の訓練はときとして度を過ごしやすい。それは思いやりの心を完全に抑えることもできる。素直な性質を歪めたり、途方もないものに変えることもできる。偏屈を生んだり、偽善を育んだり、ときには情愛を鈍感にさせたりもできる。
しかし、克己の理想は、心の安らかさを保つことである。(新渡戸稲造)

感情を出さないことや、寡黙であることの訓練は、行き過ぎると危険だと稲造先生は仰っています。

他人の感情に影響を及ぼさないように配慮することは大切だと思いますが、感情を共感することも同時に大切なことだと思います。
人情を察することも一つの情け。思いやりの心がベースにあっての克己。己に勝っても、人をないがしろにしては意味がありません。

今日の宣言
自分に克つことだけに捉われず、広く思いやりの気持ちをもって、心安らかなる境地を目指す。
武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える   知的生きかた文庫 武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える 知的生きかた文庫
奈良本 辰也

ビジュアル版 対訳武士道 ビジュアル版 対訳武士道
新渡戸稲造博士と武士道に学ぶ会

参加者の声 偉人に学ぶ人間学 第1回「橋本左内」を終えて

2009 年 6 月 8 日 192 views コメント (0)

参加者の声

★インスパイアインターナショナル㈱ 石崎 則夫 様(42)
「俺をここに呼んだからには…」しびれました。

★㈱インベステック 青木 豊 様(29)
志を持つ人間の強さを実感しました。橋本左内のように若くして志を立てた人間の「気付き」がいつ起こったのか、とても関心があります。流されて生きてしまいがちな現代ですが、自分の声に耳を傾ける時間を少しずつ増やしていきたいと思います。

★大八木 晋平 様(28)
一、先生の話しぶりを見て、バイタリティーも重要な競争力の一つと感じました。
一、橋本左内の覚悟(若年にしての)
一、学びは手段でしかなく、それにより自身の知を明らかにして、ことに励む
一、歴史と自分との相互の置き換え

★楽天㈱ 中川 孝晃 様(28)
・先生のお話のところどころに出てくる「漢字の語源」を聞くと、日本語の素晴らしさを改めて感じました。
・どんなに正しいことでも、「変化」が起きると摩擦が起きる、その時は、ひたらす味方を増やすということに、非常に共感し、勉強になりました。
・ちょうど前回に感じたことを、自分の普段の生活でどれだけ活かせているかを改めて振り返ることができました。(開催間隔がちょうど良かったです)

★㈱システム・プラウド 宮本 洋輔 様(28)
先ず、自分に出会うこと、天命を知ること!!

★会社員 吉川 正由樹 様(27)
・知識や能力が高いだけでなく、志の高さや器の大きさも大切
・良い事をしようと思っても必ず反発する人はいるため、味方(理解者)を増やすことが必要
・部分的ではなく、全体を見る必要あり

★㈱NTTデータ・フロンティア 匿名(26)
“志”を立てるきっかけとなるのは、この講習会であること

★会社員 末永 飛鳥 様(25)
志を胆におとし、自分の志を一生懸命伝えられないリーダーには誰もついてはこない。

★㈲野口工業 野口 勉 様(25)
・先生のタイムスケジュールや、考え方など、もう少し具体的な内容に触れて頂きたかった。
・人に伝えたい話をする人に対しての、理解しようとする聞き方

★フューチャー・アーキテクト㈱ 進藤 良平 様(24)
友人との飲みが居心地悪く感じることがあった、別の会社になりお互いの意識の高さが変わっていると思う。その友人を引き上げるためには、真の「益友」になる必要があると感じた。

★学生・社会企業家支援委員会 江口 晋太郎 様(24)
僕自身、最近、先生がおっしゃったように、「志」を立て、行動した途端、多くの仲間、それこと一生を共にするような友人に出会えました。
そうしたものは、自分の「意識」によって、生み出した「結末」なのだと、改めて気づきました。これから、自分の立てた「志」に向けて、頑張っていきたいと思います。

★大学生 内村 未来 様(23)
・学びと生活の置き換え、サイクルを意識すれば、何をしても成長できる!
→アルバイトや飲み会も、学びの姿勢や目標を持って挑もうと思いました。
・「気」は、米を炊くときの湯気だということ!!
→米はすばらしい!!会津の米はもっとすばらしい!!誰かに伝えたいです。
・志を立てると、昔の友人と合わなくなってくる
→最近の私です。志は立っているのか…。

大変勉強になりました!

★大学生 新館 豊浩 様(21)
今の所、入ってきたものが多い為に少しまとめて気付いていきたいと思います。
ただ、歴史に埋もれた中にも、若くとも素晴らしい人がいたと知りました。

★大学生 新館 豊晃 様(19)
橋本左内という名前は知っていたのですが、どのような人物かまでは知りませんでしたので、私なりに勉強してまいりましたが、今日の林先生のお話で、ただの知識だけで無く、現代で橋本左内という人物の思想等を、どのように活かすかを考えさせられました。以後、これを糧に彼の尽きる事の無い向上心を見習いたいと思います。

★大学生 竹内 規晃 様(18)
著書の中で「段取り力」という齋藤孝教授の言われている事と似ているなと思いました。左内さんの行き方を参考にさせて頂きたいと思いました。軸を崩さず、自分を見つけていきたいです。

講習会を終えて

講習会参加者:23名
懇親会参加者:17名

前回の講習会は「志」のお話でした。今回の講習会は、まさにその「志」を若くして立て、26年間を懸命に生ききった橋本左内のお話でした。

橋本左内が、天下国家のために活動する姿に、感動しながらも、どこか悔しさを感じる内容でした。同じ年代で、同じ事がやれないはずがないと、気を振るわせて頂ける密度の濃いお話でした。

孔子の高弟、顔回が「舜(中国古代の聖人)は何者だ、私は何者だ。どちらも同じ人間では無いか。」との憤りに通じる思いでした。(通じるとは、随分おこがましいですが、、、)

一、稚心を去る
一、気を振ふ
一、志を立つ
一、学に勉む
一、交友を択ぶ

14歳の左内に負けないよう、今後も精進していきたいと思います。

どうぞ、今後とも宜しくお願い致します。

偉人の流儀シリーズ 偉人に学ぶ人間力向上のヒントとコツ

2009 年 5 月 30 日 371 views コメント (0)

偉人の流儀シリーズ 偉人に学ぶ人間力向上のヒントとコツ

織田信長橋本左内勝海舟西郷隆盛上杉鷹山聖徳太子


昨年は「今年の漢字」である「変」が表すように、原油の大暴騰やリーマンショックなど、本当に変化の多い一年でした。
変化の激しい今だからこそ、私たちは過去に学ばなければなりません。
時代は違えど、激動の時代を駆け抜けた偉人。
彼らの生き様は、私たちにこの時代を生き抜くヒントを与えてくれるでしょう。

この講座は、偉人の生き方・考え方・行動を学ぶことで、我々の普段の生活、仕事の仕方、生き方をもう一度見直し、人間力を向上させようというものです。
当講座は前年から行っておりますが、今年度からの受講も大歓迎ですので、お気軽にご参加下さい。

2009年スケジュール

  • 第7回 5月8日(金) 織田信長
    ~旧弊を打ち破り、変革と建設を同時に進めよ!~
  • 第8回 6月5日(金) 橋本左内
    ~15歳の書「啓発録」に学ぶ立志の基本~
  • 第9回 7月3日(金) 勝海舟
    ~江戸無血開城を成し遂げた胆力・気迫の養い方~
  • 第10回 10月2日(金) 西郷隆盛
    ~天を相手に生きよ!出会う人を魅了する器量とは~
  • 第11回 11月6日(金) 上杉鷹山
    ~改革による「生き筋」の創造と、その要諦を学ぶ~
  • 第12回 12月4日(金) 聖徳太子
    ~乱れ切った世の中に「和」を唱えた「憲法十七条」~
時間
18:45~21:00 (受付 18:15~)
会場
会津大学 講義棟 M1 (地図
受講料
ビジター2,000円/年間パス10,000円 (1回分お徳になります)
主催
XPConference
協賛
会津維新クラブ
問い合わせ先
森田竜平(学生)
TEL. 080-2619-2973 Mail. s1140212[at]u-aizu.ac.jp
【講師】 林 英臣 

人間学経営研究所 所長松下政経塾第一期生東京・政経倶楽部 顧問

林英臣先生

1957年 静岡県浜松市生まれ。本家は京より下向した社家。9歳から独自の「世界平和の祈り」を始め、17歳で東洋文化研究に素志を固める。以後、中国医学・武道・ヨガを修め、日本思想・東洋思想・仏教思想を研究。文明法則史学の提唱者、故・村山節氏からは文明800年周期論を、故・松下幸之助氏からは人間学に基づく経営思想を学ぶ。

現在、経営者・政治家・学生・青少年など幅広い層を対象に、年間約150回の講義・講演をこなしている。その内容は、文明論・大和言葉・論語・韓非子・老子・孫子・武士道哲学・幕末志士論・松下経営思想など多岐に渡り、聴衆を飽きさせない平易で雄弁な語り口にファンが多い。

平成17年の、スカパー衛星放送・中国思想講義(論語シリーズ)も好評を博した。

また、「政治家天命講座(東京・京都)」を主宰して、国是を担う志士政治家を育成している。(林英臣政経塾主催、2009年現在第四期生が入塾)。著書は、ロングセラーの『縄文のコトダマ』をはじめ、『超文明論』『志士復活』『人間力を磨くヒントとコツ』など20数冊を数える。『人を動かす「7つの術」』は、「本当の人間通になる1冊だ」と竹村健一氏が激賞した話題の書。最新刊は『心の的を射る人・外す人』。共著の最新刊は『真・日本再生』

大人物となる五つの心得 其の五 交友を択ぶ(択交友)

2009 年 4 月 22 日 114 views コメント (0)

益友と損友を見極め、積極的に益友と関わり大切にする

交友とは自分が交際する友人のことで、択ぶとは多くの中から選び出すという意味である。同じ先生の下で学ぶ人、同郷の人、年が同じくらいの人、自分と交際してくれる人があれば、みな友人として大切にしなければならない。しかし、友人には損友と益友があるから、その違いを見極めて選ぶということが必要なのである。友人の中に損友がいたら、自分の力でその人のよくない面を正しい方向へ導いてやらねばならない。だがもし益友と称すべき人があったら、自分のほうから交際を求め、どんな事でも相談して、常に兄弟のように交わるのがよい。世の中には、益友ほど巡り合うことが少なく、獲がたいものはないから、一人でも益友があったら、何をおいても大切にすべきである。

(参考:橋本左内「啓発録」

損友と益友を見極めて、損友は正し、益友とは積極的に交際せよと最後の心得にて説いています。

飲食、歓楽行楽で親しくなった友人は、普段は互いに親友だと肩を組んでも、平穏無事のときに、わが人格を向上させるための役には立たないし、問題が生じたときも、救ってくれる者でもない。このような、損友とはできるだけ会う機会を少なくし、遊興への誘惑に負けぬ強い意志をもち、馴れ合いすぎて道義心を汚すことのないように、注意しなければならない。そして、何とか工夫してその友人を正しい方向へ導き、文武に関心を持つように仕向けることも、友人としての道である。

さて、すぐに心安くなれる損友と違って、益友とは、悪いところを遠慮なく注意してくれる友人をいう。自分の過ちを指摘し、戒め正してくれこそ、自分では気がつかない誤りや不足している部分を改め補うことが、可能となるのである。そのため、益友からそのような忠告を受けることを嫌ってはならない。

良い友人は良い友人を呼び、悪い友人は悪い友人を呼びます。折角、良い友人と付き合っても、自分が自身に甘く、遊興にふけるようなら、損友だとみなされ、良い友人も離れていってしまいます。悪い友人と出会うことがあっても、自分の徳が優れたものなれば、感化は人に及ぶということがあるかもしれません。結局は、自分を磨き、高めることが基本にあり、その中で友人を求めていくということが慣用なのだと改めて思いました。

最後に、益友を見定めるポイントが五つ紹介されています。

  • 厳格で意志が強く正しいか
  • 温和で人情にあつく誠実であるか
  • 勇気があり果断であるか
  • 才智が冴えわたっているか
  • 小事に拘泥せず度量が広いか

これらは、全く自らにもそうであるかと問い続けなければならないことだと思います。
友人を選ぶ大切さを、自らを高める大切さと同様に考え、己の修養に励んでいきたいと思いました。

啓発録―付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 (568)) 啓発録―付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 (568))
橋本 左内

大人物となる五つの心得 其の四 学に勉む(勉学)

2009 年 4 月 21 日 129 views コメント (0)

優れた人物の立派な行いを習い、実行する

学とは“ならう”ということで、優れた人物の立派な行いを習い、自らもそれを実行していくことを言う。従って、先人の忠義や孝行の立派な行いを習っては、直ちにそれを慕いまねし、自分もそうした人々の忠義孝行に、決して負け劣るものかと努力することが、学ということの第一義である。

(参考:橋本左内「啓発録」

志を立てたときの聡明さや道徳心が失われることのないように、学に励み、より志を太く逞しくするようにと述べています。

”の文字の意味を誤解している人が多い。読書し、知識を得ることが学と思っている人がいるが、そうではないと一喝し、学問の本旨とするところは、忠孝の精神を養うことと、文武の道を修業することの二つであると説いています。

本を読み、学んだ気になっていた自分を恥ずかしく思います。自ら“実行”できてこそ学んだと言え、実行が伴わない内は、それは学んだとは言えません。知っているだけでは、知っていると言えません。まさに、“知行合一”の精神を説いているのだと思います。

次に、“”、つとめるというのは、自己の力を出し尽し、目的を達するまではどこまでも続けるという意味を含んだ文字であると説明しています。何事によらず、強い意志を保ち続け、努力を重ね続けなければ、目的を達成することはできない。まして学問は、物事の道理と筋道を解釈し明らかにするものであるから、世の中の実際に役立つ学問とするには、その意志、努力、押して知るべしである。

成功者に「どうして成功したのですか?」と問うと、決まって「成功するまで続けたからです。」と返ってきます。誰でも正しい思いで、続けさえすれば、必ず実るはずなのに、実らない人がいるのは、“継続”ということができないからに他なりません。決して諦めず、続けることが、成し遂げるための唯一の答えなのかもしれません。

学問を始めたら、それを鼻にかけることなく、出世や富に心を奪われることなく、才や知を誇ることなく、自ら用心し慎むべきだと最後に忠告しています。

ついつい鼻にかけたくなってしまいがちですが、自らを戒め、修養し、世のため人のためになるよう学び続けていきたいと思いました。

啓発録―付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 (568)) 啓発録―付 書簡・意見書・漢詩 (講談社学術文庫 (568))
橋本 左内