300年続く老舗の教え「質素倹約を旨とし、決して驕るな」
滋賀県近江八幡市に1720年創業の扇四呉服店という呉服店があります。
この呉服店には、代々大切に守られてきた家訓が掲げられていると、九代目当主の中村四郎兵衛氏が内容を説明されています。
◆以下、家訓
私の友人の老商に店の盛衰の原因は何かと質問すると、老商は次のように答えた。
「適切な場所を選び、適切な商品を商い、その際、利益を薄くして得意客を敬い、質素倹約を旨として、主人は油断することなく、また使用人は骨身を惜しまず働く。
これこそが家業が発展する基本であり、その基本を行えば、お客は集まり、店は必ず盛んになる。
そのようにして大店となり、財を成し、蔵が建つほどになり、親族は敬い、同業者も従うようになると、その店の権威は高くなる。
そうすると、主人はそれを誇るようになり、使用人も怠けるようになる。この時に衰退の兆しが現れるものだ。これが世の道理である。
だから、家業が成功して盛んになってきた時には、主人も使用人もすべて勉励を心がけ、決して油断なく一日中栄利が増えるようにすれば、ますます家業は盛んになる。
これに反して、主人も使用人も驕って威を奮い、日々安心して家産は永久になくならないと思い、そのうちに秋風が吹くことを知らないでいると、衰退が始まるものであり、俄かに問題が起きて、初めて衰退を知ることになる。
その段階では、もはや挽回することはできない。
この分かれ目を知るのは大変難しい、しかし私はあなたのために一言助言しよう。貴賎貧富にかかわらず、他を軽侮する気持ち、驕りが心に起こったら、その時が衰退の始まりであり、衰退をもたらす諸々の問題はここから起こってくるものだ」
この言葉は間違いのない真理であると深く感じ、ここに世の人々に知らせるものである。
箇条書きの家訓は良く見ますが、なんと文章になっています。
五代目の当主が、京都、大阪に積極的に店を展開しながらも、あえなく、その当主の代で撤退させているという、苦しい思いから家訓を残されたということでした。
「質素倹約を旨とし、決して驕るな」ということだと中村氏は要約しております。
また、氏は色々講演の依頼を受けるそうですが、全て断っているそうです。
なぜなら、父から「商売人は絶対に人前で話してはいけない。それは驕りの気持ちに繋がる」と戒められていたからだそうです。
驕りの気持ちを戒めるということは、とても難しいことだと思います。驕りが身を滅ぼすことを理解していながらも、気付かないうちに驕っていることがあると様々な先人から教えられます。
すぐに調子に乗ってしまう自分ですが、どのように生活したら、驕りの気持ちを戒められるのか、よくよく慎んで考えていきたいと思いました。
参考:致知2009年8月号