武士道の仁―人の上に立つ条件とは何か

民を治める者の必要条件は「仁」にあり

「仁」(じん)は人(じん)であり、「仁」という漢字は、人偏に漢数字の二と書きます。人が二人相親しむ意味であり、それは愛や思いやり、寛容、他者への同情、哀れみです。これらは至高の徳、即ち人間の魂がもつあらゆる性質の中の最高のものと認められてきました。

大学に「未だ上仁を好みて下義を好まざる者あらざるなり」とあります。

国王が思いやり慈しむ政治を好んでいるのに、国民が正義の行いをしないということはない。

孟子曰く「不仁にして国を得るものはこれ有り、不仁にして天下を得るものはいまだこれ有らざるなり。」

「仁」をもたずして他国との戦いに勝つ人はいるが、「仁」をもたずして天下を統一した人は、いまだにない。

男性的な義・女性的な仁

「義」高潔な義、厳格な正義というものが男性的であるとするならば、「仁」は優しく母のような徳です。慈愛は女性的な性質である優しい諭す力を備えています。

「武士の情け」に内在する仁―武士の音楽や詩歌

武士が音楽をたしなむ風習や詩歌をたしなむよう奨励があったのには理由があります。武士は元々戦うことが仕事であり、荒々しい気性が備わっています。しかし、「武士の情け」に代表されるように、熾烈な戦の中ですら他者を思いやる気持ちを持ち合わせているのが武士です。そして、それが我々の中の「高潔」なものに訴える響きを持っています。

情けの気持ちを育むために、音楽が風習となり、詩歌が奨励されました。
音楽―血気にはやる心をなだめ、血生臭い修羅場から思い遠ざけるものである。
詩歌―より優しい感情を表面に表わし、その反対に内面にそれを蓄えるためである。

戦いの恐怖の真只中で他者への哀れみの心に貢献したのが、音楽や詩歌に対するたしなみでした。

新渡戸稲造優しい感情を育てることが、他者の苦しみに対する思いやりの気持ちを育てる。他者の感情を尊重することから生まれる謙虚さ、慇懃さが「」の根源である。

と稲造先生は仁の章を締めくくっています。

「仁」思いやりというのは、ここぞ!と発揮するような大袈裟なものではなく、相手への小さな意識の連続なのかなと思います。「仁」の気持ちを育むための「音楽」「詩歌」という視点は新しい発見でした。優雅さを求めての「音楽」「詩歌」とは根本的に意味が違います。
母性の感情をいかに育むかは、自分の課題でもあります。
日々、われがわれがと「我」に走らぬよう、相手を意識し、尊重するような生活を送りたいと思います。

スポンサーリンク
レクタングル広告(大)
レクタングル広告(大)
スポンサーリンク
レクタングル広告(大)

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です